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4章 パーティへ 来賓集う 3 ファムケ・ビッケル 生きていて
3 ファムケ・ビッケル 生きていて

 『桃源郷の未来号』は、ルナ氏の戦列艦から50ヤードも離れてはいない所でアンカーを下ろした。

 銃声が、剣戟が、そして悲鳴が、血の匂いが、私の耳や鼻を刺す。
 いつもならば、私たち海の人間にとって、ちょっとゴージャスな音楽鑑賞の様なもの。
 そう澄まして、耳障りにも感じないはずなのに、今日に限って不快に感じる。
 気を抜けば、吐き気さえ覚えるであろう。そうだ、あの中にいるのは、私の友達、私の知人。
 そうじゃなくとも、今の私には人の死が気軽ではない。
 死にいく人々は、本来ならば、私と共に水平線を臨むかもしれない同じ人間なのだ。


 搭載されているカッター、三隻は総動員。
 洋上でジタバタしている人間を、時には死体を掬いあげている。
 私にとっては、どちらもお客さん。敵味方の区別はない。

 しかし望んでいるのは、ポンキィの生き死にを知っているお客さんだ。

「まだ、まだ?まだ判らないのか?」
 私は文字通り地団駄を踏みながら、甲板の上をグルグル、 
望遠鏡を手にしたり外したり外から見ればまるで、そうまるで挙動不審、うろたえながら叫び声をあげた。

「ファム、もうちょっと、きっと無事ですから。朗報を待ちましょう」
 きっと無事なのはわかる、わかりたい。
 でも今さっきまで隣にいた、そういう確定な声が聞きたいの。

「ムキー!!!!」
 叫び声を上げながら、再び望遠鏡を手に取った。

 一隻のカッターに視点が合う。

 ハンベが指揮をするカッターだ。
 ハンべの眼鏡が太陽に反射して眩しい。

 うん?

 ハンベが立ち上がり、こちらを向いている。

 その手が、親指と人差し指をつなげ輪を作るのが見える?

「お、お、お、オッケィ?OKサイン?」
 私は声が届かないのに、双眼鏡の向こうのハンベに問いかけていた。

 それに応答するかのように、彼の顔が頷く。

 「どーしました、ファム?」

 「お、オッケェだって! OKだって」

 「オッケェ?、OKって?」

「ハンべがOKサインを出してる! ポンキィは生きてる、少なくとも生きてたってこと」
 私は望遠鏡をカタラーナに投げつけ、ハンベ艇の方に駆け寄った。

 接舷するカッターに縄梯子が下される。

「ハンベ、お疲れぇ!」
 私はカッターのハンベに大声で見舞う。

「ファムケ、その方が……」
 縄梯子を片手でゆっくり上ってくる髭面の男に手を向けた。
 筋を痛めたのか、片手が力なく垂れ下がってはいるが、命に別条はないようだ。
「ポンキィ殿の下にいたそうです」
 私は彼の手を握り、船に引っ張り上げる。

「で、君、申し訳ないが、私に、ポンキィは……ポンキィの無事を……」
 片膝を付き、肩で息をしている彼だったが、私には気遣うより前に聞きたいことがある。

「いえ、お気になさらず。お嬢様方の友人、ファムケ・ビッケル殿に申し上げます」

「うん」
 私も甲板にへたり込み、彼の肩に手を置く。

「ポンキィお嬢様はご無事でございます。旗艦イネスからポッコロ様の艦に移り……」

「うんうん」
 生きていた。

 私は顔を下に向けた。
 目から液体が、留めることが出来ない液体が、喜びの液体が。

「うっ、うっつ、お、お味方優勢、あとは無事のご帰還を」
 彼の眼からも、そう涙が零れ落ちているのだろう。

 私は甲板に突っ伏した。涙を見られたくない。
「あ、ありがとう、良かった、ウッ、ヒク、ヒッツク、しんぱ、心配をしてしまった」

「お嬢様方にも必ずお伝えあげます。ビッケル殿のご厚情、我々は決して無碍にはいたしません」

「ははは、そういうのはいい、無事なら……」

「ファム」
 カタラーナが私の髪に優しく手を回す。

 私は突っ伏せたまま、彼女の膝に顔をおさめた。

4. サンキムルナ パーティの始まり








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