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4章 パーティへ 来賓は集う 1 サンキムルナ 再起
4章 パーティへ 来賓は集う 

1 サンキムルナ 再起

 硝煙の煙、火薬の匂い、血の靄が溢れ返る。

 俺は未だ、呆然と呆けてもいないし、恐怖に囚われてもいなかった。

 必死に兵を纏め、指示を出し、一度は奴らの猛攻を押し返した。

 しかし、俺の兵は簡単に崩れ去った。

 原因は、そう。
 そう、あのガレーだ。チミッコ海賊団の旗艦。
 俺の戦列艦を正射を受けながら、その船体は最後まで俺を苦しめた。

 ポンキィのトリックプレーにしてやられた感はある。

 しかし、まさかの展開。俺の乏しい想像力が悪いわけではない。

 想像と言うよりも、ファンタジーではないか。

 現実に、それを取り入れろと言うのか。馬鹿らしい。

 しかし、この馬鹿らしいファンタジーが、現実では起こるらしい。
 そう、つい先ほど、それは起こりやがった。

 そのファンタジーとやらは、俺にとってはまさか、チミッコにとってはまさか以上のはずだ。

 もちろん俺にとっては最悪のまさか、チミッコにとっては奇跡のまさかのはず。

 あのガレーは、奴らを押し返せるはずだった俺の兵に迫った。

 戦列艦に比べれば、大した大きさではない。

 しかし、戦場の恐慌が恐怖を呼び、絶望を招いた。

 ガレーの激突に、その有り得ないはずの衝撃に、俺の兵は恐慌に陥った。

 声を張り上げ、呼び留めたが効果があるはずもない。

 俺は、まだ冷静だった。

 接近と前後して、もう一艦の陽動艦が接舷を試みるであろう。

 その為に、側弦にも兵を割いたのだが、この激突で兵は乱れているはず。

 俺の隊でさえ大壊乱、今そこで逃げる一人が背中から血飛沫を上げるのが見えた。

 立て直すのは困難だ。

 二度目の衝撃が走った。先ほどに較べたら緩やかな衝撃。

 しかしその衝撃に、俺はかっこ悪く尻餅をつきながら、敗北を悟った。

 もう1隻の艦が接弦を果たしたのだ。負けだな。

 斬り合っている敵味方ともに衝撃は同じはず。

 だがまぁ、あの衝撃はチミッコ側には追い風。

 ただでさえ傾いている勢いが、より勢いを増すこと間違いない。

「どこに逃げるというのだ !逃げ場はない、支えろ!」
 俺は腰を持ち上げながら、そう叫んだ。

 叫びつつ腰を弄ったが、そうだ、俺はサーブルを帯刀していない。

「はは、自業自得だな」

 自嘲気味に呟いてはみたが、いつもの調子が出ない。俺の耳にも擦れて聞こえる。

 押し寄せる敵兵に、俺の兵は一方的に逃げ惑っている。

 人ごみにまぎれて、二つの角、ノルマンヘルム見え隠れする。

 そうか、あの少女が来るのか、引導を渡しに。

 逃げるか?

 そうも考えたが、先ほど叫んだじゃないか。

 この船に逃げ場はない。

「アハ、やっと見つけた」
 その笑みは、返り血を化粧とし、昨日より大人びてさえ見える。

「チミッコ海賊団、次姉ピンキィ、参上仕ったのら。遅くなって申し訳ないのら」
 その眼は赤くルビー色に輝く。

 戦場の高揚感と、先ほどの侮蔑のアイサツに燃え上がっているのだろう。

「おぉ、お出迎えもできずに申し訳ない。この船の主、サンキムルナでございます」

俺もとことん人が悪い。自分の命の危機であるというのに軽口が先に出てしまう。

「気にしないで結構、今の私は貴公を八つ裂きにしたいだけなのら」
 彼女の赤い瞳が、一際光を放つ。
と同時に右手のエペが狙い澄ますニワトリの嘴のように俺の首を捉える。

 俺は丸腰。終わったな。

「サヨナラ」
 そう呟いたのが耳に入ると同時に、彼女の右足が滑るように俺の下半身に向かって潜り込む。

 俺は目を瞑った。

 丸腰の俺には必殺の一撃だ。交わせない。致命傷を外しても、二撃に耐えることはできまい。

 だ……が、

 キーン。

 金属が弾ける音。

 視界を開くと、彼女は私の左斜め前、エペを防御に構えていた。

 怒りと悔しさに漲る表情。少女がまるで悪鬼のようだ。

 俺は生かされた。

 そして俺の前には、サーブルを上段に払った初老の、あの男が……私は男の名前を思い出した。

 そう先ほど、俺がサーブルを贈った男。

 新米のころからの航海士、ボブだ。

「お館さま、お待たせしました」

「遅いじゃないか、ボブ。」
 シャツと背中間の冷たさに鳥肌を覚えながら、必死に軽口を絞り出すことに成功した。

「遅くなりまして。で、私の名前を覚えていらっしゃったか?」
 見透かされたか。

 迷ったが、素直に答えた。
「すまん、ボブ。今思い出した」

「いいのです、そう思ってました」
 敵対している彼の表情は見ることは出来ないが、後背から覗く彼の頬の筋肉は緩んだ。

「もう忘れない、これからは」

「ありがとうございます。お館さま、これを。お預かりの品です」
 ボブは腰のサーブルを、私に向かって放り投げた。

 俺はそのサーブルに飛びつき、鞘を抜く。

「ふん、白けた。仕切り直しなのら」
 彼女は、後ろずさり味方の陣に飲み込まれる。


 俺は生き残っている。

 そして俺たちの兵は、寸前で押し留まっている。

 盛り返したとかそういう好転の問題ではなく、とどのつまり、逃げ場がないのだ。

 船尾楼の隅っこで押し固まっているだけ。

「ボブ、残念ながら負けだ」

「そのようで。こういうケースは幾らかありましたな」
 さすが、歴戦の古参兵だ。死を前にして、ニヒルにニヤリ笑みを寄越した。

「とりあえずこの状況を抜け出す。舵を切って、無理やりな」

「わかりました」
 ボブは私の眼を見つめ、頷く。

「死ぬなよ」
 ボブは無言で俺の前に立ち、サーブルを構えて振り返る。

 俺はボブの姿を追わず、船尾楼から甲板に向け飛び降りた。


 俺の船は風と戦乱の成すがままに揺れ動いている。

 人の意志が働いていない。

 ということは、操舵室は敵の制圧下にある。

 アンカーを下ろされていないだけマシだがな。

 俺は駆けた。

 船首に割いた兵は、敵船の人員より圧倒的多数だったはずだが。

 この状況を考えると、目測を見誤ったか、混乱で敗走したか。
 とにかく何処も彼処も劣勢なのは間違いない。

 砲撃の対象が無くなった時点で、砲手達も迎撃に向かってはいるだろうが、纏める人材がいない。

 甲板の反抗も多寡が知れる。

「くそったれが」
 俺は倒れていくであろう味方を置き去りに、操舵室へ向かった。

 まずは船を動かさねば。

2.ポンキィ ミ・ツ・ケ・タ・ノ・ラ






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